地盤改良材のセメント改良材を比較!種類や特徴、相場について解説!
2019年01月18日 地盤改良
地盤改良のセメントには、多くの種類があり、「ポルトランドセメント」「混合セメント」「特殊セメント」のおおよそ3つに分けられます。セメントに添加剤を入れることで、地盤改良の目的にあったセメントを作り出すことが可能となります。
この記事では、地盤改良で用いられるセメントについて特徴や費用、メリットやデメリットについて解説します。
・セメントの種類が多くてわからない
・セメントの地盤改良について知りたい
・セメントの違いについて知りたい
各セメントの特徴を知り、用途や効果に最適なものを選びましょう。
地盤改良で用いられるセメントの種類
地盤改良で用いられるセメントにはさまざまな種類が存在します。
特に地盤改良に関しては、その特性や目的に応じて適切なセメントを選択することが重要となります。以下3種類のセメントについて解説していきます。
種類 | 特徴 | メリット | デメリット | 費用 |
ポルトランドセメント | 一般的に使われているセメント | 品質が確保されている | 特殊な条件下では使用不可 | 2,000円/25kg |
混合セメント | 特定の性能を持たせるために使われるセメント | コストが安い | 早期強度が出ない | 1,320円/25kg |
特殊セメント | 特殊な条件で使われるセメント | 工期短縮、緊急工事の対応可能 | コストが高い | 15,000円/25kg |
また、地盤改良において、安定した強度を得るためには添加量の割合が非常に大切です。地盤改良についての計算はこちらの自動計算ツールをご活用ください。さらに詳しく知りたい人は以下の記事も参考にしてください。
参考ツール:地盤改良自動計算ツールの利用について
参考記事:固化材留意点や最低配合量・材料計算
ポルトランドセメント
種類 | 特徴 | メリット | デメリット | 費用 |
ポルトランドセメント | 一般的に使われているセメント | 品質が確保されている | 特殊な条件下では使用不可 | 2,000円/25kg (普通ポルトランドセメント) |
ポルトランドセメントは、セメントの中でも最も一般的に用いられるタイプです。
強度が高く、多くの建築物の基礎や道路の舗装にも使用されています。また、水との反応性が高く、早期に強度を発揮する特徴もあります。主なメリットは、一般的なコンクリート工事で使用でき、JIS規格品であるため品質も確保されている点です。デメリットは、特殊な条件下(短工期など)では向かない場合がある点です。普通ポルトランドセメントで費用はおよそ1袋(25kg)で約2,000円です。
ポルトランドセメントにはさまざまな種類があります。
・普通ポルトランドセメント
・早強ポルトランドセメント
・超早強ポルトランドセメント
・中庸熱ポルトランドセメント
・低熱ポルトランドセメント
・耐硫酸ポルトランドセメント
一般的に用いられるのは、普通ポルトランドセメントです。条件により最適なセメントがありますので、使用前に検討しましょう。
混合セメント
種類 | 特徴 | メリット | デメリット | 費用 |
混合セメント | 特定の性能を持たせるために使われるセメント | コストが安い | 早期強度が出ない | 1,320円/25kg (高炉セメントB種) |
混合セメントは、セメントに混合材料(フライアッシュや高炉スラグ)を加えて作られるセメントです。
混合セメントには、高炉セメントA・B・CやシリカセメントA・B・C、フライアッシュセメントA・B・Cといった種類があります。環境への影響を低減するためや、特定の性能を持たせるために異なる材料が混合されます。たとえば、耐久性を高めるためや、水和熱をおさえるために使用されることが多いです。
混合セメントのメリットは、環境負荷低減や水和熱の低下、化学抵抗性の向上、ワーカビリティーの向上、コスト削減などがあります。
水和熱…コンクリートが硬化する際に発生する熱のこと。
ワーカビリティー…コンクリートの扱いやすさのこと。
デメリットは、構造体に使用できないものがある点や早期強度が出にくい点などが挙げられます。高炉セメントB種費用はおよそ25kgで1,320円です。
特殊セメント
種類 | 特徴 | メリット | デメリット | 費用 |
特殊セメント | 特殊な条件で使われるセメント | 工期短縮、緊急工事の対応可能 | コストが高い | 15,000円/25kg (アルミナセメント) |
特殊セメントは、名前の通り特定の用途や条件に特化したセメントです。
高温や高湿、特定の化学物質に対する耐性を持つもの、あるいは特別な色や質感を出すためのものなど、多岐にわたる種類が存在します。特殊セメントは、海の上に建物を建てる際や道路、ダムの建設などで用いられています。一般家屋の地盤改良で使用されることはありません。
主なメリットは、工期短縮や緊急工事への対応、特殊な条件下での使用が可能であることが挙げられます。デメリットは、効果を理解していないと逆効果になることやコストが高いなどが挙げられるでしょう。特殊セメントの種類にもよりますが、アルミナセメントで費用はおよそ25kgで15,000円と非常に高価です。
固化材の種類や特徴
地盤改良で用いられるセメントにはいくつか種類があります。この章では、4つの固化材について解説します。
種類 | 特徴 |
セメント系固化材 | 普通のセメントでは固化しにくい場合に使用される。一般的に使用される固化材。 |
石灰系固化材 | 短期間で軟弱地盤を改良したいときに使用される。 |
複合系固化材 | セメント系固化材と石灰系固化材の特徴を併せ持つ固化材。 |
高分子系固化材 | 水を多く含んだ建設汚泥を短時間で硬化させるときに使用される。 |
それぞれの特徴についてよく理解したうえで、材料を使い分けましょう。
セメントとセメント系固化材
種類 | 特徴 |
セメント系固化材 | 普通のセメントでは固化しにくい場合に使用される。一般的に使用される固化材。 |
セメントは地盤改良材として非常にポピュラーです。セメントに各種成分を加えたのがセメント系固化材で、普通のセメントでは固化しにくい土で使用されます。
セメント系固化材とは、主にポルトランドセメントをベースとして、その性質を調整するための他の成分が混合されたものを指します。強度が高いため、幅広い土質に適合性があり、インフラ基礎を恒久的に保全します。
石灰と石灰系固化材
種類 | 特徴 |
石灰系固化材 | 短期間で軟弱地盤を改良したいときに使用される。 |
石灰系固化材は、石灰に各種成分を加えた地盤改良材です。石灰には生石灰と消石灰の2種類があり、地盤改良では生石灰がよく用いられます。
セメント系固化材が幅広い軟弱地盤に適用できるのに対し、石灰系固化材は、ごく短期間に軟弱地盤を改良する必要があるときなどに主に利用されます。
複合系固化材
種類 | 特徴 |
複合系固化材 | セメント系固化材と石灰系固化材の特徴を併せ持つ固化材。 |
複合系固化材は、セメント系固化材と石灰系固化材を混ぜ合わせた固化材です。
セメント系固化材の水和反応と生石灰の吸水発熱効果による即効的な脱水効果により、ローム、黒ぼく、粘性土及び建設発生土などの改良に効果を発揮します。
高分子系固化材
種類 | 特徴 |
高分子系固化材 | 水を多く含んだ建設汚泥を短時間で硬化させるときに使用される。 |
高分子系固化材とは、建設汚泥を固化した地盤改良材です。高分子系固化材は、建設汚泥と混合すると短時間で固化することができます。そのため、水を多く含んだ建設汚泥を早期に搬出することが可能であり、汚泥の有効なリサイクル手段として注目されています。
セメントの選び方
国土交通省管轄の土木工事では、強度が高く構造物の安全性を確保するのに最適なセメント及びセメント系固化材が好まれる傾向があります。一方、農林水産省管轄の土木工事では無機質で無害な石灰及び石灰系固化材が用いられることが多いようです。また、ひと口に「セメント系固化材」「石灰系固化材」といっても成分の配合量によって地盤への影響や地盤改良の仕上がりが変わってくるので、カタログで地盤改良材の成分や特徴をよく吟味する必要があります。
セメント系地盤改良材には一般軟弱土用固化材と特殊土用固化材があります。特殊土用固化材は、毒性を持つ六価クロムが土壌環境基準を超えて溶出しやすい土地「特殊土」でよく使用されます。セメント及びセメント系固化材を地盤改良に使用した場合、条件によっては六価クロムが土壌環境基準を超過する濃度で溶出する恐れがあります。特殊土用固化材はそのリスクを低下させるために開発された地盤改良材です。
施工前に現地の土壌と使用する地盤改良材による溶出実験を行った上で地盤改良材を決定するなど、安全と環境のために適切な措置をとっております。六価クロム対策に限らず、環境に配慮した地盤改良材は増加傾向にあり、無粉塵をアピールする商品などもあります。
セメントによる地盤改良のメリット
土木工事や建築プロジェクトにおいて、安定した地盤は非常に重要です。セメントによる地盤改良のメリットについて解説します。
地盤改良の方法は多岐にわたりますが、セメントを用いる手法はその効果や手軽さから多くの現場で採用されています。セメントによる主なメリットは、以下の3つが挙げられます。
・強固な地盤が形成できる
・品質の確保がしやすい
・施工速度が早い
具体的に見ていきましょう。
強固な地盤が形成できる
地盤改良でセメントを用いると、強度が高く、安定した地盤を形成できます。セメントは水と混合することで化学反応を起こし、固化します。この固化作用により、元々緩やかだった土の粒子間をしっかりと結びつけ、強固な地盤を作ることができます。建物や道路の沈下を防ぐだけでなく、長期的な耐久性も向上させることが期待できます。地盤改良を行わないと、液状化現象や地盤沈下といった問題が発生してしまいます。
品質の確保がしやすい
セメントは製品としての品質が一定であり、適切な混合比や施工方法を守ることで一貫した品質の地盤改良を実施できます。また、セメントの固化過程は比較的短時間で完了するため、施工後すぐに品質の確認が可能です。
地盤改良では、配合量(割合)が非常に重要となってきます。この配合量を守ることで安定して高品質な地盤を確保することができます。他の工法(柱状改良や鋼管杭)と違い、職人の技量に左右されることが少ないのはとても大きなメリットといえます。
施工速度が早い
セメントを用いた地盤改良は、施工速度が非常に早いというメリットも持っています。
セメントと水と土を混合するだけのシンプルな工程と、迅速な固化反応により、短期間で大きな面積の地盤改良を進めることができます。これは、工事期間の短縮やコスト削減にもつながります。セメントを用いた地盤改良の流れを簡単に説明します。
1.改良材割付範囲確認
2.改良材散布
3.攪拌
4.改良深さ確認
5.完了
セメントによる地盤改良のデメリット
セメントを使用した地盤改良は多くのメリットを持っていますが、一方でいくつかのデメリットも存在します。デメリットも知ることで、適切な改良方法について理解しましょう。
・深い地盤の改良はできない
・六価クロムの発生
・セメントの飛散の可能性がある
深い地盤の改良はできない
セメントを用いた地盤改良は、主に浅い地盤の強化や改善に適しています。主にバックホウという重機での施工となるため、アームの届く範囲が施工可能範囲となります。そのため、およそ2メートル以上の深さの場所に対しては、アームが届かないため、施工することができません。
軟弱地盤が深い場合、柱状改良工法や鋼管杭工法といった他の地盤改良工法について検討しましょう。
六価クロム発生の恐れ
地盤改良工事で心配されるのが六価クロムの発生です。六価クロムとは、発がん性物質で、土壌汚染対策法で定められた特定有害物質のことです。
セメントは、石灰や粘土などの天然原料を主成分としており、その中の微量成分のひとつであるクロムは、自然界では一般に三価クロムとして存在しています。セメント製造過程において一部が酸化されて六価クロムとなりセメント化合物に存在します。セメントは水と混ぜると水和反応により微量成分を取り込んで固定する能力がある為、水和物の中に六価クロムが閉じ込められ、溶出することはありません。しかし、対象土質や配合条件によっては、六価クロムが溶出してしまうことがあります。六価クロムを発生させないためには、地盤改良を施工する前に地盤調査を行い、対象土質を用いた六価クロム溶出試験を実施して、使用してよいかを判断しましょう。もし、対象土質が腐植土や火山灰質粘性土(ローム)などであった場合、六価クロムの発生しない工法(鋼管杭工法)も検討しましょう。
セメント飛散の可能性がある
セメントと土を混合する際や、セメントを散布する際に、風などの影響でセメントが飛散する可能性があります。住宅街での地盤改良などでは、近隣住民からのクレームにつながる恐れがあります。しかし、飛散しにくいセメント材の使用や、施工業者が飛散防止を行うため、大きなデメリットにはならないでしょう。
地盤改良におけるセメントについてよくある質問
地盤改良でセメントを使用する際のよくある質問をまとめました。
セメントによる地盤改良の費用相場は?
セメントによる地盤改良の費用は、使用するセメントの種類、施工する面積、現場の状態などさまざまな要因によって変動します。
一般的には、平均的な住宅用地での地盤改良の場合、平方メートル当たりの費用を基準に算出されることが多いです。具体的な価格を知りたい場合は、地盤改良業者に直接見積もりを取ることをおすすめします。この記事で紹介しているセメントの種類と単価はこちら。
種類 | 費用 |
普通ポルトランドセメント | 2,000円/25kg |
混合セメント(高炉セメントB種) | 1,320円/25kg |
特殊セメント(アルミナセメント) | 15,000円/25kg |
地盤改良に使われるセメントの種類は?
地盤改良に使用されるセメントには、主に3つの種類があります。
・ポルトランドセメント
・混合セメント
・特殊セメント
それぞれのセメントには特有の特性や用途があり、現場の状態や要求に応じて最適なものが選ばれます。詳しい特性や違いについては、本記事の「地盤改良で用いられるセメントの種類」を参照してください。
地盤改良でセメントを使うメリット、デメリットは?
セメントによる地盤改良のメリット、デメリットは以下のとおりです。
メリット | ・強固な地盤が形成できる ・品質の確保がしやすい ・施工速度が早い |
デメリット | ・深い地盤の改良はできない ・六価クロム発生の恐れ ・セメント飛散の可能性がある |
まとめ:セメントの地盤改良は浅い地盤に最適
セメントを用いた地盤改良の特徴や適用範囲、メリットやデメリットについて解説しました。
セメントによる地盤改良は多くのメリットがあり、浅い地盤での施工が最適です。品質確保のしやすさと施工の迅速さから、住宅建設などで多く用いられています。一方、深い地盤は施工できないため、他の地盤改良工法の検討が必要です。また、六価クロムの発生やセメントの飛散などのリスクへの対策も不可欠です。
地盤改良は、建物の安全、安心のために重要な工事です。地盤改良材としてなにを使用するか・地盤改良材の添加量をどうするかについては、さまざまな条件をもとに決定します。改良する地盤の特性や構造物の種類、地盤改良材の価格、環境に対する影響、施工後は産廃が発生するかなどを総合的に判断しましょう。
地盤改良のご依頼やお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。