河床および堤防の石灰改良
2021年01月23日 河床
この記事では、地盤改良の意義を、河川改修工事に伴い河床および堤防を石灰改良(石灰による地盤改良)する事例を用いて説明します。河床や堤防が透水性の高い土質材料である場合、洪水時に堤防が充分な役割を果たせないだけでなく破堤する恐れもあります。地盤改良でそのリスクを小さくできるのです。
地盤改良は、改良材や機械等を使って、主に軟弱地盤を強化することを指します。地盤改良は安定処理と同一視されがちなのですが、厳密には使い分けが必要です。安定処理は地盤や路床、河床の材料に充分な支持力や強度がない場合、セメントや石灰を添加して粒子どうしの結合を強める工法です。安定処理に加えて、排水や圧密、置き換え、締固めなど改良の工程全体を地盤改良と呼びます。ちなみに、安定処理土とは、安定処理を行った後の強度と安定性を増した土のことです。これに対して、改良土は地盤改良のために製造された土木資材を指すケースもあります。
この記事で焦点を当てる石灰改良のメリットを説明しします。低強度から高強度まで必要な改良強度を発現させることが可能なこと、ヘドロや有機質土などに対して強度発現ができること、仮置きが長期に及んだ場合も強度が確保できることなどです。長い歴史を持つ石灰改良は環境負荷が小さい工法といえます。石灰改良については『石灰による地盤改良マニュアル[第7版]』(日本石灰協会)(※)等の参考資料があります。
河川改修工事に伴い河床および堤体部を石灰改良する工事の概要を説明します。
そもそも堤防(築堤盛土)は透水性の低い土質材料で築造されなければなりません。河床や築堤盛土が透水係数の大きい(水を通しやすい)土で構成されている場合、洪水時の基礎地盤漏水や堤体の破損・破堤が懸念されます。『河川土工マニュアル』(財団法人国土開発技術センター)(※)においてもその危険性は指摘されており、対処法として地盤改良の施工を説明しているのです。
河床を地盤改良しながら築堤盛土の堤体部を改良していく際の施工方法を説明します。河川の流れをせき止めたりかわしたりする措置を行った上で、河床の土に石灰または石灰系固化材を添加し、混合・攪拌します。強度を増した土は築堤盛土の土質材料としても利用します。河床および堤体ともに転圧を行うことで工事終了です。尚、安全性を確保するための品質管理として、施工前と後に河床や堤体盛土を構成する土質等について各種調査や試験を行うことを申し添えておきます。
河床の地盤改良は、充分な強度を発現させつつも、水質汚濁等の問題が起こらないよう配慮しながら進めるのです。
※「石灰による地盤改良マニュアル[第7版]」日本石灰協会
※「河川土工マニュアル」財団法人国土開発技術センター