ため池の構造と安全を守るための対策
2021年12月11日 ため池
ため池の構造を見ると、農業用水を提供するという本来の目的を果たすことはもちろん、豪雨による水位の上昇に備えた仕組みになっていることがわかります。この記事ではため池の設備や周辺の水の流れ、ため池の安全を守るための対策について説明します。
ため池の設備
ため池は堤体、樋管やゲート(水門)、洪水吐きといった設備を備えています。ため池の堤体とは堤防のことで、水を通しにくい性質の土を固めて築かれています。堤体の中でもとりわけ水を通しにくい部分をコアあるいは刃金と呼びます。古くは人力によって堤体を突き固めていましたが、現代ではタイヤローラーで施工しています。
樋管はため池の水を田んぼへ流すために設けられた設備です。昔は木や石をくり抜いて樋管を作っていました。今はコンクリート製の管に置き換わっています。また、ゲートは田んぼへ流す水を調整する役割を果たしています。
洪水吐きはため池の水位が上昇した際に、余分な水を流す場所のことです。堤体を部分的に切り下げて築くケースが多いようです。
ため池周辺の水の流れ
ため池が貯めている水は、山などの集水域から流れ込むようになっています。川の水が水路を経由し、ため池に引き込まれているケースもあり、この場合の川も集水域にあたります。ため池の水を農業用水として使う地域を受益域と呼びます。ため池どうしを水路で結んで水を流していることもあります。
次に、ため池内部の水の流れを説明しましょう。ため池には、斜樋(しゃひ)または立樋(たてひ)という取水設備と、底樋(そこひ)という導水設備があります。
斜樋は堤体の前法面に沿って埋められています。斜樋の管に複数個所もうけられた取水孔から水が取り入れられます。一方、立樋はため池の底から立ち上がる樋管のことです。立樋と底樋の組み合わせは時代が下るほど増えています。立樋には何段階かの高さで栓が設けられ、水位の上昇・下降に応じて適した高さの栓を開けて水を流します。立樋には垂直に立つタイプと堤体の斜面に沿って築かれたタイプがあります。
斜樋や立樋から取り入れられた水が、堤体の底部に埋設された底樋管を通じて、提外へと流れていくのです。
安全を守るために
ため池は災害を起こさないような構造上の工夫を施して築かれています。しかし、近年の集中豪雨や地震によって、ため池から水があふれ出る・堤体が崩壊するといったことが起こり、下流地域に大きな被害をもたらしました。こうしたリスクを抑えるためにも日ごろの維持管理が重要です。ため池の浚渫や堤体の地盤改良によって安全を守りましょう。