ため池を地盤改良して安全を守る

2021年10月22日 ため池

ため池における地盤改良の必要性について解説します。ため池は農業用水の確保のため、江戸時代に多く築かれました。私たちの暮らしを支える大切なインフラですが、豪雨や地震による被害が問題となっています。地盤改良はため池を守る有効な手段なのです。

 

ため池とは

ため池を定義すれば、水の量が充分でない地域において農業用水を確保するためにつくられた人工の池です。流域の大きい河川がなかったり、降水量が少なかったりする地域に多く設けられました。ため池の機能は水を貯めること、そして水を供給することです。

全国に約16万あるため池は、西日本により多く存在します。明治時代以降に築かれたものは3割ほどで、他は江戸時代かそれ以前、あるいは築造年代が明らかではありません。古くから人々の生活を支えていたことがわかります。

ため池には雨水を一時的に貯めることで洪水を調整すると共に土砂が流出するのを防ぐ機能もあります。また、多様な生物が生息する場所・地域の人びとの憩いの場所など、多面的機能があるのがため池なのです。

ため池に地盤改良が必要な理由

築造年代の古いため池は堤体が老朽化しており、豪雨や地震などの災害に耐えられなくなっています。このようなため池の安全対策として堤体改修などが急務です。ため池の堤体が決壊すると、下流域の宅地や農地に被害を及ぼします。特に、細粒分の少ない土で築造された堤体では耐震性が不安定です。液状化が発生したため池ほど地震の被害が大きかったという報告もあります。

ため池の維持管理には、地盤改良によって堤体の強度を上げ、豪雨や地震のリスクに備えることが欠かせないのです。

ため池における地盤改良の成果

ため池の地盤改良工事は強靭化対策として有効であることが確認されています。地盤改良を行った堤体ではクラックを防ぐこともできます。また、地盤改良は被災したため池の原状回復の方法としても有効です。

課題は、堤体を改修するための粘性土の確保です。近年ではため池の付近で堤体の強度を上げ、充分な遮水性を果たす、均一な粘性土を手に入れることが困難になってきました。対策として、ため池の堤内に堆積した泥土を原材料の一部に活用するといった工夫が実践されています。堆積した土を利用することはコスト削減だけでなく、ため池の貯水容量の確保や水質改善にも効果があります。

 

地盤改良によってため池の安全と安心が守られるのです。