ため池工事が実施される背景と注意点

2022年03月01日 ため池

ため池工事が実施される背景として、ため池の決壊で大きな被害が発生したことがあげられます。工事を実施して災害を防ぐことが強く求められているのです。防災だけでなく農業者の利便性向上も実現できます。施工前には地元との調整をしっかり行いましょう。

ため池の工事

ため池の防災工事

決壊を起こして下流の農地や宅地に大きな被害を与える可能性のある農業用ため池は、全国各地にあります。平成307月豪雨で農業用ため池が決壊して大きな被害が出たことから、ため池の防災工事が喫緊の課題として認識されることとなりました。とはいえ、地方公共団体の財政や人的資源だけで防災工事を行うのは難しく、農林水産省は令和2年に「防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法」を制定し、防災工事等を推進することを決めました。法律の目的は、ため池の決壊を起因とする水害等から人命と財産を守るため、防災工事を集中的かつ計画的に進めることです。

法律では、防災工事等基本指針に基づいて、都道府県知事において防災工事等推進計画を定めることとされました。推進計画中で言及された防災等重点農業用ため池については、国が財政上の措置や地方債への配慮を行うことが定められています。

この法律上の防災工事では、ため池の埋め立て等、ため池を廃止するための工事が含まれます。また、防災重点農業用ため池は令和37月末現在で54,610か所が指定されています。

ため池工事の効果

現在、日本各地でため池の防災工事が進行中です。

老朽化した農業用ため池の堤体を地盤改良したり、洪水吐きや取水施設等の施設を改修したりすることで、決壊を防止するのが防災工事の内容です。これらの工事が決壊のリスクを大幅に下げることはもちろん、農業用水の安定供給にも寄与します。

防災工事の一例を紹介しましょう。堤体を地盤改良して全体の強度をあげた上で、堤体のうち刃金土と呼ばれる遮水層を補います。さらに、鞘土(さやど)または覆土(ふくど)と呼ばれる土で覆うことで、安定した堤体に生まれ変わらせ。また、ため池の斜樋(しゃひ・取水管)と底樋(そこひ・導水管)・洪水吐きといった設備を点検し、状況にふさわしい改修や更新を加えます。

こうした防災工事のみならず、ため池を利活用し保全する目的での工事が同時に行われるケースもあります。ため池の周辺では独特の生態系が構築されており、地域資源として認識されてきています。ため池周辺の景観整備を行ったり、ため池を浚渫し、さらにその浚渫土を耕土として利用したりする工事を実施する例も増えています。

一連の工事で、例えば次のような変化がため池において確認されています。

・漏水量が多かったが、漏水が止まった。
・取水施設の更新で、操作が容易になった。
・ため池に溜まっていたヘドロがさらわれたことで貯水容量が増加した。
・景観が改善した。

結果として貯水容量が増え、決壊の危険性を低減させると共に、農作業における利便性を向上させています。

ため池工事に関する注意点

ため池の管理は地元関係者が行っている場合が多く、地元の意見を考慮して工事の計画を立てることが不可欠です。例えば、ため池の法面保護の材料ひとつとっても、「使用する材料が、維持管理を行う地元関係者にとって扱いやすい材料か」を検討しなければなりません。

また、ため池の浚渫にあたっては、浚渫土の受け入れ先を事前に決めておくべきでしょう。工事の計画段階において地元関係者と調整します。

地元との調整の他にも、実績が豊富で信頼できる業者に工事を依頼することが大切です。ため池の浚渫および地盤改良は、セリタ建設にぜひお任せください。