ため池の種類と基礎知識
2022年02月25日 ため池
ため池の種類と基礎知識を紹介します。ため池は谷池と皿池に大別され、異なる特徴があります。地元のため池の場所を知り、浸水範囲を把握することは災害の備えとして有効です。ため池に関する知識を身につけ、先人の遺産といえるため池を正しく管理しましょう。
ため池の役割と歴史
ため池とは、貯水と取水の機能を備えた、農業用水を提供してくれる池のことです。人工的に作られたものを指しますが、天然の池や沼を改修したものもため池に含みます。雨水や河川から流れ入る水をため池に貯えておいて、水をたくさん使うシーズンに田畑へ水を送り込みます。
農閑期にあたる冬のうちに水を貯えることで、大量の水が不可欠な春先や初夏に耕作地で水を利用できます。また、梅雨時に増えた河川の水を貯めることで真夏の水不足に備えることが可能です。
ため池のおかげで、季節ごとの降水量の変化に対応でき、さらには異常気象の影響をも小さくすることができます。ため池は安定的に農作物を栽培するための知恵といえるでしょう。
ため池は日本各地に16万か所以上あるといわれます。取水しやすい、流域の大きな河川のない地域で特に多く作られました。古代に築造されて現代に残っているため池もあります。近世や近代にも多くのため池が作られました。現代でも水源として大切にされているものが数多く存在します。
ため池の種類
ため池は山においても平地においても作られており、地形に合わせた多様なため池があります。山あいや丘陵においては、谷を堰き止めて築かれたため池が多いようです。一方、平野部では堤で周りを囲むことで作られたため池が多い傾向があります。
以下でため池の種類を示しますが、「水を貯めるための堤体」・「洪水を安全に流下するための洪水吐き」・「水を取り入れるための取水施設」という構造を一般的に備えています。
・谷池
谷を堰き止めて築いたため池です。堤体が高くて短いのが特徴で、山に囲まれていることから、大きなため池であることが少なくありません。ため池の大きさは集水面積に比例するので、貯水量も大きい傾向があります。谷池は、集落の上流域に所在するため、決壊した場合は被害が大きくなります。なお、我が国では堰堤の高さが15m以上のものは河川法上、ダムと定義されます。
・皿池
窪んだ土地の周りに堤体を設けることで築いたため池です。堤体が低くて長いのが特徴で、集水面積は一般的に狭いため、貯水量も少ない傾向があります。用水を中継する役目を果たしているケースもあります。生活排水などが混じることで水質が富栄養化している例も見られます。
・親子池(重ね池)
複数のため池が棚状に連なっている形態です。
地元のため池を知ることの大切さ
ため池は農業を支える大切な役割を果たしていますが、天災などを引き金に決壊したり、浸水被害をもたらしたりする恐れもあります。天災が起こってから慌てないためにも、近隣地域のため池について知っておくことが大切です。
「ため池マップ」を作成して公開している自治体もあるので、ホームページなどで調べてみるとよいでしょう。「ため池マップ」には、浸水範囲や避難所の位置など、いざという時、安全確保するために知っておくべき事柄が示されています。浸水を予測し、災害時にどのように行動を起こせばよいか家族で話し合うなど、対策しておくと安心です。
ため池は、地下水を養う・気候を緩和する・生態系を保全する・洪水を調節する・土砂流出を防止する・憩いの場を提供するなど、多面的機能を持っています。先人の創意工夫がつまった遺産としてため池を大切に保全している地域や、ため池にまつわる伝承を語り継ぐ地域、ため池周辺で祭りやイベントを行う地域もあります。周辺の清掃や堤内の浚渫、各種調査を行って状態を把握するなど、ため池を適切に維持管理しましょう。