グリーンインフラの視点とため池
2022年01月17日 ため池
グリーンインフラの視点でため池の維持管理や改修を考えます。雨水を貯めて農業用水を提供する他、洪水調節機能を果たすため池。自然をうまく活用する新しい概念・グリーンインフラの視点が、今後はため池の維持管理に求められていくことでしょう。
グリーンインフラとは
グリーンインフラはグリーンインフラストラクチャー(green infrastructure)の略称です。自然が備えている様々な機能や構造を活用して社会問題を解決するための持続可能な手法といった説明が可能です。ただし、グリーンインフラの定義に明確な規定はなく、組織や識者によって様々な定義がなされています。
もともと、「インフラ」は道路や橋梁、ダムなどの構造物を指すことが多いのですが、グリーンインフラの概念はより幅広く、自然をうまく活用した様々な取り組みを含みます。例えば、豊かな生態系を保持し、地域の憩いの場であるといった、ため池の多面的機能を活かすための活動などがそれにあたります。
グリーンインフラの対義語はグレーインフラです。しかし、グレーインフラを否定するのがグリーンインフラの目的ではありません。グリーンインフラとグレーインフラとが協調することによって社会基盤を構築していこうという考え方がなされています。
グリーンインフラに関する動向
我が国においては、2014年の国土強靭化基本計画において生態系を活用した防災減災を推進することが取り入れられました。さらに2018年の同計画の変更と国土強靭化アクションプランにおいてグリーンインフラを推進することが示されています。
2015年の第二次国土形成計画の基本的考え方および第五次国土利用計画にもグリーンインフラの取り組みを進めることが記され、2019年には国土交通省がグリーンインフラ推進戦略を発表しています。2020年にはグリーンインフラ官民連携プラットフォームが設立されました。
これからのため池の維持管理を考える
グリーンインフラの言葉および概念は新しいものですが、人間は古くから自然をうまく活用してきました。グリーンインフラを実施する際は、伝統的な知識や技術が利用される場面もあります。また、自然が持つ様々な機能を活かすために、土地の成り立ちを深く知る努力もなされます。
ため池の多くは築造年代が古く、土地の特性に合わせて伝統的な技術が用いられており、その点はグリーンインフラの概念となじみやすいといえます。ため池周辺の豊かな生態系や地域の憩いの場としての機能を守るためにも、ため池の安全や維持管理、および改修にはグリーンインフラの視点を取り入れることも今後求められてくるでしょう。