ラップルコンクリートと直接基礎

2022年11月21日 地質

ラップルコンクリートの特徴に加えて、施工手順と施工時の留意点を徹底解説することで、理想的な施工計画の立案が可能になります。ラップルコンクリートの施工時には、掘削底面(床付け面)である支持地盤を目視で確認することが設計・施工上、非常に重要になります。

ラップルコンクリートの直接基礎

攪拌状況

ラップルコンクリートの特徴

ラップルコンクリートの特徴は、大別すると下記の2点に集約されます。

①地盤改良工法

ラップルコンクリートは、地盤改良工法の1つで置換工法と呼ばれています。基礎地盤が軟弱地盤だと判断されたときは、深さに応じて地盤改良工法を実施します。軟弱地盤の層厚別の地盤改良工法の説明は、別記事『ラップルコンクリートの強度(https://www.serita.jp/geology/strength/)』にて解説しております。こちらも併せて参照ください。

ラップルコンクリートは、軟弱地盤が地表面から0~2m程度堆積している場合の中でも、やや深めのケース、つまり杭基礎では深さが足りないケースで採用を検討します。本工法を採用する最も大きなメリットは、施工性が優れていることです。支持層が深い場合は、杭を打ち込むことによって支持層へ構造物の重量を伝えますが、支持層が浅い場合には、杭を打ち込むよりも、施工が容易なラップルコンクリートで対応します。

 

②無筋コンクリート

ラップルコンクリートは、内部に鉄筋を使わない無筋コンクリートです。通常のコンクリート構造物と同様に均しコンクリート(捨てコンクリート)を打設した上に建設します。均しコンクリートの目的は、ラップルコンクリートの下端地盤を平坦にすることで型枠を精度高く設置できるようにするためです。均しコンクリートは、ラップルコンクリート本体と接していますが、本体構造物としては扱わないため、設計基準強度に要求性能はありません。

 

ラップルコンクリートの施工手順

ラップルコンクリートは、下記の5つの施工手順から成り立ちます。

①掘削(床付け):当該地山の軟弱地盤層を取り除くために、バックホウを用いて掘削(床付)を行います。建設予定の構造物の大きさに依存しますが、設置範囲の一部だけを掘削する壺彫りを行い、置換範囲だけの軟弱地盤を取り除くことが一般的です。

②均しコンクリート打設:型枠を精度よく組み立てるために、均しコンクリートを打設し、平坦な床版を作ります。

③型枠建て込み:均しコンクリートの上に、型枠を組み立てます。ラップルコンクリートは、基本的に正方形のブロック状(立方体)として活用されるため厚みが0.5~2m程度になります。従って、型枠を組み建てる時は、コンクリート打設時にパンク(型枠が壊れる事象)を起こさないようにサポートを多数使用します。周辺が軟弱地盤の壺彫りの時は、均しコンクリートを施工予定のラップルコンクリート面積よりも大きめに打設することでサポート鉄筋を打つ等の工夫が可能になります。

④コンクリート打設:層厚が1~2m程度と大きい場合は、施工計画時に層厚管理を立案します。具体的には、一層毎の打ち上がり高さを50cm以内として打設間隔を30分程度あけることが重要です。また、施工計画において、脱型(型枠を取り外す作業)を早く行いたい場合は、コンクリートの設計基準強度を18 kN/m2の代わりに21 kN/m2の材料を用いるケースもあります。

⑤型枠の解体:脱型を行います。本設の躯体ではないため、ラップルコンクリートの表面仕上げは不要です。

 

ラップルコンクリート施工上の留意点

最も重要なことは、掘削底面(床付け面)において支持層に到達している事です。ラップルコンクリートは杭と違い、浅い深さで支持層が出てくるときに採用されるため、しっかりと支持層を目視確認する必要があります。ここで、ラップルコンクリートを適用箇所は、ボーリングデータを元にしっかりと支持層が出現することを事前に把握することが重要です。