ダム浚渫工法と搬送手法
2020年11月09日 ダム
ダムやため池の浚渫にあたっては、ダム浚渫工事から浚渫土の搬送・処分に至るまでを一連のシステムと捉えて計画を立てます。ダム浚渫工法と搬送工法の組み合わせパターンによって向いているケースと不向きのケースがあるので、堆砂の状況や地形条件その他各種条件に応じて選択することが重要です。
浚渫と搬送の一例をあげましょう。浚渫船を用いてバックホウ浚渫(浚渫船にバックホウを搭載した浚渫工法)してダムの堆砂除去し、土運船(土砂を収納するための泥倉を備えた船)でダム浚渫土を陸揚げ。さらに浚渫土をバックホウでダンプトラックに積み、ダンプトラックが浚渫土を仮置き場まで運びます。仮置き場に置いた浚渫土はその後、資材として活用されたり、廃棄物として処分されたり、河川下流の土砂として還元されたりします。バックホウ浚渫や、グラブバケットで堆砂を汲み上げるグラブ浚渫では状況に応じて様々な搬送工法と組み合わせます。
ポンプ浚渫の場合は、浚渫から搬送まで一括で行います。ダム湖底の堆砂をカッターで崩して浚渫船内のポンプで水と共に堆砂を吸い上げます。吸い上げた堆砂はスラリー状にしてパイプラインで搬送します。浚渫土の最終処分地が比較的近い場合に向いている工法です。
ダム浚渫工法にはこの他にマジックボールや、水中掘削機及びエアーリフトを用いた工法があります。ダム貯水池やため池には様々な性質の土砂が堆積しているので、状況に応じて浚渫工法を選択します。
浚渫土の搬送工法には前述の土運船による搬送(対象土砂をあまり選ばない上に環境負荷が小さい一方、大量の浚渫土の運搬が難しいこともある)、スラリー輸送(ポンプ浚渫の搬送方法。大量の浚渫土を連続して搬送することができるが、粒形の大きい土砂では能率が落ちること・排砂管に騒音が発生することがデメリット)、空気圧送(バックホウ等で浚渫した堆砂を圧送タンクに入れ、圧縮した空気で圧送する。含泥率の高い浚渫土でも輸送可能だが、圧縮空気を開放する音が大きい)、ダンプ・トラック運搬(短距離から長距離まで柔軟に対応可能。振動や騒音、粉塵が発生する点が課題)、ベルトコンベア輸送(ベルトコンベアをループの形状に稼働させ、間断なく搬送。大量の浚渫土を長期間かつ長距離輸送できる一方、振動・騒音や浚渫土の飛散が発生する)などがあります。
このように、数多くある浚渫工法と搬送工法からどのような組み合わせを選択するか、よく検証することが大切です。