ダム浚渫費用は災害対策の必要経費
2020年11月16日 ダム
ダム浚渫費用は災害に備えるための必須の経費です。ダムの堆砂除去する手段として有効な浚渫について「お金がかかる」との批判がありますが、浚渫工事を行うことでダムは治水機能を充分に発揮し人々の暮らしを守ります。ダムの役割と浚渫の重要性についてお話します。
令和2年度、総務省は防災・減災対策の一環として「緊急浚渫推進事業費」に9億円を支出する予定です。これは河川・ダム・砂防・治山の浚渫に係る費用を総務省が自治体に支援するものです。令和2年度から6年度までの5年間で4900億円が支出される見込みとなっています。総務省がこのような支援を行う背景には、令和元年の台風19号による河川の氾濫による深刻な被害があります。防災・減災の観点から河川やダム浚渫は必須という判断がなされたというわけです。
ここで、なぜダムの浚渫が防災・減災につながるのかを説明します。ダムには治水・利水・発電などの機能がありますが、災害対策に関わってくるのは治水機能です。豪雨の際、増水した分をダムが貯めることで川の水があふれないよう調整する役割を担っています。そして、ダムが最も力を発揮できるのが堆砂の少ない状態なのです。大量の堆砂はダムの容量を減らすことにつながります。そしてダムの容量が減ることは、予想外の大雨で増水した分を貯める容量が不足し、下流で洪水が起きやすくなることを意味します。総務省が自治体のダム浚渫事業を後押しするのは、ダムが治水機能を発揮することで災害を防ぐためなのです。堆砂がヘドロ化している・ダム湖一帯が軟弱地盤であるなど、ダム浚渫工事を行うハードルが高いケースほど早急に着手する必要があるでしょう。
そもそもダムは、設計時にダム堆砂シミュレーションを行い、100年間に堆積する土砂の量を想定した上で建設されています。それでも堆砂が深刻になる背景には、予想外の豪雨が頻発して土砂が水とともに大量にダム貯水池に流れ込んでいることや、土砂がダム貯水池の底部だけでなく斜面上部に溜まりやすいことなどがあります。
天災の増えている現代だからこそ、ダムの治水機能に対する期待は増しています。にもかかわらず、堆砂が原因でダムの機能に支障が出るのは残念なことです。ダム浚渫にお金がかかることは確かですが、ダムが治水機能を発揮しないことで大規模な災害が引き起こされ、人々の暮らしに影響が出るリスクを避けるためには必要な経費と言わざるを得ません。