建設DXが進まないのはなぜ?推進に関わるデジタル格差について解説
2024年06月06日 建設DX
建設DXは、建設業界の人手不足を解消し、生産性向上のための取り組みとして推進されています。
しかし、実際の現場へのDXの導入は進んでおらず、その背景にはさまざまな要因が挙げられます。
今回は、DX化における課題と建設業界のDX事例を紹介します。
建設DXが進まないのは「デジタル格差」が大きな要因
労働集約型産業の建設業は、2020年の平均就業者は1997年のピークから28%ほど減少しており、人手不足が深刻化しています。また、2024年からは働き方改革による残業時間の制限が適用されることもあり、建設DXを導入して労働コストを削減し、生産性向上への取り組みが進められています。
しかし、多くの建設会社ではDX導入がスムーズに進まず、企業によって導入状況はバラバラです。このように建設DXが進まない背景には、上述した人手不足によるリソース不足に加え、デジタル格差が大きな要因として挙げられます。
インターネットが普及したことで、スマートフォンやタブレットなどのデバイスを所有する人が増えました。しかし、デジタル化の流れに乗り切れず、アナログ方式を求める人々は一定数存在します。特に、中小の建設企業では、デジタル化の流れに取り残されている人が多いようです。
建設DX推進においてデジタル格差が生まれる理由とは?
建設業でデジタル格差が生まれ、DXが進まない理由として、次の5つが挙げられます。
- デジタル化しにくい業務の多さ
- 小規模企業の多さ
- 高齢者人材の増加
- 重層下請け構造
- 町場と野丁場
建設業は現場業務が多いため、デジタル化しにくいと感じている人は多いようです。また、総務省統計局の「令和3年経済センサス」(https://www.stat.go.jp/data/e-census/2021/)によると、建設業界において9人以下の小規模な企業は全体の85%を占めており、慢性的な人手不足や他業界と比べて進む高齢化により、デジタル化が難しい状況にあります。
そのほか、建設業特有の重層下請け構造や町場と野丁場などの違いにより、大きなゼネコンの元で業務を行う人たちはデジタル技術に触れる機会が多いものの、小規模工事や孫請けなどの階層構造の下位に関わる企業は、デジタル機器を使う機会がないことも理由として考えられます。
建設業界におけるDX事例を紹介
小田島組(https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/casestudy/file117/)では、公共工事のデジタル化に取り組む際、飲食業のセントラルキッチン方式を参考にしたそうです。
公共工事では多くの現場写真を撮影する必要があり、写真の整理と説明に多くのリソースを必要としていました。そこで行った対策は、現場単位で行っていた写真管理を本社で一括管理し、若手従業員にはデータ収集・管理を任せ、ベテラン従業員には難しい工事の現場作業に注力させるという分業制度です。
双方が得意分野に集中できる環境を作ったことで、小田島組は業務の生産性向上だけでなく、女性の在宅勤務を実現し、受注件数や売上の向上に繋げていきました。
このようなDXへの取り組みは、今後建設業界全体で加速し、あらゆる課題の解決につながることが期待されます。