緊急浚渫推進事業(浚渫)とは
2022年11月09日 河床
緊急浚渫推進事業とは何かに関して経緯を踏まえて徹底解説します。なぜこのような事業が認められるのか?予算はどこから出てくるのか?に関して理解することで本事業の背景と現状を正しく理解できるようになります。
緊急浚渫推進事業とは?
緊急浚渫推進事業とは、昨今の相次ぐ河川氾濫(水災害)などを踏まえて、地方公共団体が個別に緊急かつ集中的に浚渫事業に取り組み、危険箇所を解消することを目的にしています。対象事業は、河川維持管理計画などの緊急的に実施する必要がある箇所として位置づけた、河川・ダム・砂防・治山に関わる浚渫事業が中心となっています。事業年度は令和2~6年を予定しており、当該期間で4,900億円程度の事業費を見込んでいます。
経緯
そもそも、なぜこのような事業が必要だったのでしょうか?それには予算を管理している事業主体を理解する必要があります。主要河川と言われる1級河川は、河川法に基づいて国土交通大臣が指定して国家が維持管理や使用制限などを統括しています。従って、管理費負担も原則として国土交通省になります。ただし、1級河川の一部区間については、都道府県が管理し、費用も負担することになっているのです。2級河川に関しては、都道府県知事が指定することとなっており、準用河川は、市町村長が指定することとなっています。
そのため、国が管理する河川については、国土交通省が対応していますが、都道府県が管理する1級河川の指定区間や2級河川、市町村が管理する準用河川・普通河川については、維持管理などの防災対策を地方公共団体の厳しい財政事情から捻出する必要があるのです。つまり、昨今の気候変動や水災害の激甚化を踏まえて予算を国が補助出来るように新しくできた事業が緊急浚渫推進事業なのです。
昨今の水害事例
昨今の水災害事例で特徴的なものを紹介します。
・平成30年7月豪雨:西日本を中心に広範囲で記録的な降雨量を記録した。本期間の総雨量が四国地方で1,800mmを超えた。
・令和元年東日本台風:関東甲信地方、東北地方を中心に広範囲で記録的な降雨量を記録した。総雨量が神奈川県で1,000mmを超えた。
・令和2年7月豪雨:日本全域において記録的な降雨量を記録した。総雨量が長野県や高知県の多い所で2,000mmを超えた。
・令和3年8月11日からの大雨:西日本から東日本の広い範囲で大雨となり、総雨量が多いところで1,400mmを超えた。
予算や発注形態
浚渫工事をはじめ、河川改修工事は多額の費用を要するため計画的に予算を組む必要があるため、昨今の激甚化する水災害に対応することが困難です。そこで、緊急的な河川を対象に浚渫工事の経費に関しては、特例的に地方債の発行が可能となりました。本特例の財政措置は、充当率100%、地方債の元利償還金に対して70%の交付税措置を講じることとなっており、一般財源は30%ですむことになります。地方公共団体にとっては、かなり手厚い財政措置になっています。