地盤改良で活用されるICTとその成果

2022年09月13日 ICT

地盤改良工事においてICT活用の事例は増えています。背景には、国土交通省が推進するi-Constructionがあります。土木建設分野の生産性を向上させることがねらいです。この記事では、i-Constructionおよび「ICT活用工事 (地盤改良工)実施要領」の概要や、ICT施工のメリットを説明します。

ICTの活用

ICT地盤改良工の進展

国土交通省は,土木建設分野において生産性を向上させるべく、ICTの全面的な活用によるi-Constructionを推進しています。ICTを活用することで、労働環境の改善や人材不足の解消を目指しているのです。i-Constructionが対象とする土木建設工事の工種は徐々に拡大されています。2019年度には地盤改良工における浅層改良および中層改良・混合処理も対象となりました。
 国土交通省の「ICT活用工事 (地盤改良工)実施要領」は、ICTを活用した地盤改良工についてわかりやすくまとめたものです。この要領では、ICT活用工事は、「施工プロセス全ての段階において」「ICT施工技術を全面的に活用する工事である」と定められています。また、ICT地盤改良工は、3次元起工測量・3次元設計データ作成・ICT建設機械による施工・3次元出来形管理等の施工管理・3次元データの納品の全ての段階においてICT施工技術を活用する地盤改良工事を指すとされています。同要領では、施工技術の具体的内容を段階ごとに説明した上で、ICT活用工事の実施方法や、実施を推進するための措置を説明しています。

ICT施工の成果

 ICT施工を行う利点を説明します。
 ひとつは、施工精度が上がることです。事前測量の工程では、施工エリアの全体に区画割りを行わなければなりません。施工機械のオペレーターは従来、目視確認で作業を進めていました。操縦席からでは確認しづらいため、誘導員を配置する必要がありました。施工機械の据え付け位置のズレなどが原因で出来形精度が一定しないという問題がありました。ICT施工の導入によって、区画割した座標や改良深度などの諸情報をオペレーターが車載モニターで確認できるようになり、施工精度の向上が実現しています。
 もうひとつは、施工中の管理方法の改善です。従来、施工中の管理はオペレーター個人の裁量に委ねられていましたが、ICT施工の導入後は、施工中の様々なデータが可視化できるようになり、ヒューマンエラーの抑制につながっています。例えば、複数装着されたセンサー部分で層ごとにマッピングすることでレイヤー(深さ)ごとの可視化が実現しました。経験や感覚に基づいた管理方法から、データに基づく管理方法になったのです。
 ICT施工の浸透によって、瑕疵や手戻りが削減されると共に、より多くの人材に対して土木建設業への門戸が開かれたといえます。i-Constructionが目指している労働環境の改善や人材不足の解消は徐々に実現されていくことでしょう。