ため池を埋め立てるか迷ったら
2022年01月07日 ため池
ため池を埋め立てるなどの方法で、ため池の廃止を検討する動きがあります。背景には、災害時にため池が決壊するリスクや、使われていないため池が増えたことがあります。この記事では、ため池の災害や廃止の方法、維持管理の方法について説明します。
ため池の災害
ため池とは農業用水を確保するために人工的に築かれた池のことです。大雨の際に雨水を一時的にためる洪水調整や、土砂流出の防止などの役割もあります。さらには、様々な生物が生息・生育する場所でもあり、地域の憩いの場とされるなど、多面的機能があるのです。
近年、ため池の決壊によって人命が失われ、宅地や農地が被害を受けた事例が報告されています。
ため池の決壊を防ぐために自治体が主体となって一斉点検が行われ、各地において対策が検討されています。平成30年11月に農林水産省が公表した基準により、決壊時に人的な被害を出す恐れがあるものは「防災重点農業用ため池」とされました。都道府県が市町村と調整して選定した「防災重点農業用ため池」は令和元年5月末時点で63,722か所あります。また、ため池に転落する事故が報告されたことから、周囲の安全対策が急がれます。ため池と周辺地域の安全を守る取り組みが全国で進行しているのです。
ため池を廃止するなら
既に使われなくなったため池の一部は廃止が模索されています。ため池の周辺で宅地化が進む一方、管理者が高齢化してため池の維持管理が十分にできないなどの事情によるものです。ため池には上流などから水が流入しているので、埋め立てが難しいことも珍しくありません。埋める以外の方法でため池を廃止する動きもあります。例えば、ため池の堤防を開削して水路を築き、水を貯めない構造に変更する工事などです。
ため池を埋め、さらにその土地を活用することを検討しているなら、地盤調査と地盤改良を行います。池の跡地の軟弱な地盤は、補強する必要があるからです。ため池の埋め立て費用に加えて地盤調査・地盤改良の費用がかかることを念頭に入れておきましょう。
ため池を活用し続けるなら
ため池を残すために重要なのは維持管理と、必要に応じた改修です。堤体にクラックや漏水が発生していないか・設備が老朽化していないかなどの点検が欠かせません。ため池を浚渫して堤内の容量を増やすことや、ため池の堤体を地盤改良して強度を上げることは決壊の対策となります。地盤改良は、ため池堤体の液状化対策としても効果が認められているのです。ため池を適切に維持管理して地域の安全を守りましょう。