河川・河床におけるセメント改良
2021年01月12日 河床
河川及び河床をセメントで地盤改良することをセメント改良と呼びます。この記事では、河川及び河床を地盤改良する意義や、セメント改良の定義・施工方法を、築堤盛土を例にとって説明します。併せて、河川及び河床のセメント改良に携わる施工者が参照する文献を紹介します。
河川改修工事の際や、橋脚・築堤盛土・護岸等の工事を行う箇所が軟弱地盤だった場合、セメントや石灰による地盤改良が必要となります。築堤盛土や橋梁を守るための重要な工事です。築堤盛土は、水防や貯水などの目的で、水が沁みとおりにくい土質材料が使用されます。しかし、周辺が軟弱地盤で適した材料が入手できない場合は地盤改良を行うことで水が沁みとおりにくい構造にするのです。
地盤改良でセメントを用いるメリットは幅広い土質に対応できる上に高い強度を発現できる点です。地盤改良において、セメントは恒久的な基礎を築くときに用いる一方、石灰は一時的な固化に用いるという具合に使い分けます。
どの程度セメントを添加すればセメント改良と呼ぶのでしょうか。セメント改良について網羅している『セメント系固化材による地盤改良マニュアル』(一般社団法人セメント協会)(※)においても最小添加量の規定はありません。強度を発現させるために、改良を行う土地の土質性状、地盤改良材のコンディションなど、総合的に判断して添加量を決定するので、一概に規定することは難しいのです。しかし、おおむね50kg/㎥が最小添加量といわれます。セメント改良における添加量の計算ツールは当社ホームページにおいて公開しておりますのでご活用ください。
セメント改良の具体例として、河川の築堤盛土をバックホウ混合により改良する施工方法を説明しましょう。軟弱地盤上にセメント系固化材を散布し、バックホウで軟弱土と混合・攪拌した上でローラーにより締め固めます。こうして築堤盛土を形成したり嵩上げしたりするのです。締め固めるのは堤体からの漏水などを防ぐ効果があります。築堤工(堤体盛土の締固め)の留意点とは、堤体盛土に関しては支持力などの耐荷性より耐水性や、空隙のない均質性が重要とされる。そのための、軟弱地盤対策、滞水/沸水処理、草木の排除/除根、地盤のかき越しなどの準備工を行うことが必要です。このようにして、私達の暮らしを守る重要な社会インフラなので品質管理を厳しく行います。工事後の地盤から試験体を採取し、充分な強度が発現できているかどうかを一軸圧縮試験などの方法で確認するのです。強度が認められれば、地盤改良は完了となります。
河川や河床のセメント改良については既述の『セメント系固化材による地盤改良マニュアル』の他、『河川土工マニュアル』(財団法人国土開発技術センター)(※)等を参照します。同マニュアルは建設省(現:国土交通省)が河川等の調査・設計・維持管理するための技術を体系化した『河川砂防技術基準』を築堤盛土の設計論や河川土工の箇所について補足したものです。河川土工の全過程において施工者が適切な技術的判断を行う手助けをしてくれます。正しい知見が安全な社会インフラを守るのです。
※「セメント系固化材による地盤改良マニュアル[第4版]」セメント協会(H24.10)
※「河川土工マニュアル」財団法人国土開発技術センター